「宝くじが当たったら何欲しい?」
「CD作る。」
オーケストラのCDを作るというのは大変なコストがかかるものでして、録音全盛期ならばいざ知らず、現在は本当に難しいことなのです。
「でも宝くじって当たらないよねー」
一等が当たる確率は、風呂桶にお米をいっぱいに入れて、その中に一粒赤く染めた米粒を入れてよくかき混ぜて、そして目を瞑ってイッパツで赤い米粒を取り出す、というくらいの確率なのだそうです。
さて、
こんな世の中だから、ということで、このアンサンブルを立ち上げました。
こんな世の中だから、コンサートができるかどうかわからない。
たとえ無観客公演になったとしても演奏を皆様にお届けできるように、映像と録音を残しておくことにしました。
結果、演奏会は無事開催できました。
映像はYouTubeで配信できました。
そしてなんと、CDもできました。
こんな世の中に、アンサンブルを立ち上げたことが、そもそも宝くじを買ったようなものだったのですね。
しかし、ただ単に運が良かったわけではないのです。ちゃんと理由があります。
『皆様のおかげ』
日本全国から(海外からも)ご寄付くださった皆様。どんな団体、どんな演奏になるのかもわからないのにご支援いただきましたことには、どんなに感謝をしても私の気持ちは足りません。本当にありがとうございました。
メンバーの母校である桐朋学園音楽部門からは創立70周年記念助成金をいただきました。
コンサート会場に足をお運びくださった皆様。おそるおそるコンサートにいらっしゃられた方々も多かったと思います。演奏後の大きな拍手、忘れることのできない思い出です。
今回の音源を録音してくださった櫻井卓さんは、私の尊敬する岩城宏之先生の晩年の録音を一手に任されていた方。ステージにあったマイクはすべて櫻井さんがセッティングしてくださいました。マイクの位置によって録音される音が大きく変わってくるのです。同じく録音担当の野田智子さんは抜群の耳(音楽を聴き取る能力)と優しく美しいお声でさりげなく的確に、こうしたらいかがでしょう、と指摘してくださる方です。このおふたりのおかげで素晴らしい音のCDが出来上がりました。ただ録音しただけではちゃんとした音にはならないのです。本当に感謝です。
CDのデザインは、ホームページのデザイン、プログラムのデザインに続いて、今回も再び松尾幸治さんです。松尾さんについてはいつかこのジャーナルで取り上げたいと思っていたほど。でもそんなことをしても「いやあ、やめてくださいよう」とか言って喜ばないだろうなあと思いますので、ここで無理矢理少しご紹介します。
松尾さんとのそもそもの出会いは、ある友人に電話をしたことから始まりました。
「アンサンブルのHPってどうやって作ったらいいのかな?」
「松尾さんに相談してみたら?話はしておくよ。」
「松尾さん、佐藤ですが、HPって……」
「あ、いいですよ。全部やりますから。お金? いやいやいやいや、そんなのはいいんです。皆さんのためにボランティアで。」
こんな底なし沼のように親切な方にお手伝いいただいていることは、EAVにとって本当に本当に(言葉が思い浮かびません)幸せなことです。私たちはもうすっかり底なしにズブズブとハマってしまって、今やEAVは松尾さんなしでは成り立ちません。
このCDのデザイン、スタイリッシュな中にもクラシックなテクニック(14世紀のだとか)が使われているんだそうです。具体的に気がつかなくても、パッと見て感覚的に、なんだかいいなあという気持ちになっていただければと思います。
3000円(送料及び税込)というたいそうなお値段をつけさせていただいたのは、売り上げを今後のEAVの活動に使わせていただけるように、という理由からです。EAVのためとはすなわち、『それでも前へ!若い優秀なアーティストたちに活躍の機会を』という当初からの目的のためです。皆様の温かいご支援をどうぞお願いいたします。CDはこちらのHP上でご購入いただけます。
CDが開発される時、カラヤンが、「『第九』が1枚に入る長さにしたらいい」と提案したので、CD1枚に収録できる音楽の長さは今の通りになったということです。
EAV第1回公演はちょうどその長さになりました。
コンパクトな一枚。一家に一枚。お中元に、ご近所様にも、いかがでしょうか(笑)
佐藤俊太郎