イギリスの20ポンド札にはエルガーが描かれていました。
私が18の時にロンドンに行って初めて住んだ寮のすぐそばにはエルガーが住んでいた家がありました。でも、エルガーの曲って、『威風堂々』と『愛の挨拶』ぐらいしか知らなかったので、わざわざ家を見に行ったりしなかったと思います。
そんなエルガーを「発見」させられたのは、親友の指揮者が、自分で弦楽アンサンブルを作って、エルガーの『序奏とアレグロ』という曲を演奏した時。イギリスでイギリス人たちがイギリス人の指揮で演奏するエルガーだったということもあるのかもしれません。もう雷が落ちたくらいの衝撃を受けました。
この曲は将来絶対に指揮したい。その時思いました。
初めて演奏したのはなぜかボストン。アメリカデビューの時。日本デビューの時もなぜかこの曲が1曲目でした。なぜか、って、自分で選んだからですが。。。
そしていよいよイギリスで。
イギリス室内管弦楽団の指揮者をしていた時、ついにその機会はやってきました。作曲家、ベンジャミン・ブリテンがこのオーケストラを指揮した素晴らしい録音がありましたので、それを何度か聴きました。
リハーサルの後、チェロの首席奏者が、
「ブリテンの録音聴いた?」
ありゃー、バレたか。彼はブリテンとの録音で弾いていたんですね。
その後たくさんのエルガー作品をイギリスのオーケストラと演奏しました。美しい思い出です。この曲の他では、ヴァイオリンコンチェルトが特に好きです。
エルガーの音楽を聴くと、イギリスにいる気持ちになります。景色が思い浮かびます。たくさんの思い出が甦ります。たくさんの人たちの顔が浮かびます。街を歩いている気持ちになります。
イギリスへいきたしと思へども、今はあまりにも遠い国になってしまいました。
せめてはエルガーを聴こう。