名前には異常にこだわるのです。
神楽坂。坂はあるけどどうして神楽なのかと思っていたらちゃんとあるのですね。
東洞院通。西洞院通。京都に行くとあちこちの住所に異常に反応してしまいます。
興部町。中頓別町。北海道に行くと読めない地名がたくさんあります。
川平湾。沖縄でも読み方がわかりません。
シャンゼリゼはChamps-Élyséesです。なんですかそれは。
ウォータールーブリッジ。これはわかるけれど橋を渡っていると変な気持ちになります。
セントラルパーク。そのまんまです。
一番気になるのは人の名前です。
由来を知りたくて色々な人に訊いてしまいます。不思議がられます。不審がられます。嫌がられます。それでも興味があるのはどうしてかなあと思っていたら、先日こんな文章に出会いました。
「名前は短い詩なんです。ご両親が考えた詩なんですよ。」
美しい言葉です。ストンと腑に落ちました。
そういえば娘の名前、妻とずいぶん考えたものです。誰かに由来を訊かれたいのに誰も訊いてくれないのが残念。
喫茶店の名前も、レストランの名前も、本屋さんの名前も、あれもこれもみんな理由があってつけられたものですよね。みんな詩ですねえ。
このアンサンブルの名前も、決めるときにはとても苦労しました。ありきたりな名前ですと大抵すでに存在しています。かといって気を衒ったような名前でもいけませんし。最終的に落ち着いたのがこれでした。
ある人に言われました。
「アンサンブル・アール・ヴィヴァンって、なんだか美味しそうな名前ですね」
え?
なに味?
佐藤俊太郎