Mozart: Duo K.423 in G major

不思議なことに毎回EAVのコンサートのちょうど2ヶ月前に感染の拡大が起こるのです。しかし去年は2回とも演奏会を開催することができました。そう考えると今回の感染も収束するのではないかと願っているところです。

こんな時にお家で音楽を楽しんでいただけるように、第3回公演で取り上げる曲を1曲づつご紹介していくことにしました。ご興味がありましたら音源を見つけてお楽しみください。Mozart 423。これだけで検索できます。なんと便利な時代でしょうか。

さて、今回はモーツァルトのヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲です。尊敬するヨーゼフ・ハイドンに献呈した6曲の『ハイドンセット』の弦楽四重奏曲を作曲していた頃に書かれた曲で、モーツァルト26歳の時の作品。

『ハイドンセット』の最初の3曲を書き終えたモーツァルトは、新妻コンスタンツェを伴ってザルツブルクへ。結局これが最初で最後の里帰りとなります。色々の出来事の中には『ハ短調ミサ曲』の初演もあり、ここではコンスタンツェがソプラノ独唱を務めました。

モーツァルトは元々は彼女のお姉さんであるスター歌手にフラれて、なぜか妹と結婚したのですが、この姉妹(4人姉妹です)は4人とも大変な教養、そして音楽の才能と教育を受けた人たちでした。

モーツァルトはオペラでもコンチェルトでも、想定しているソリストの能力や得意技に合わせて「オーダーメイドで」作曲していたのですが、このハ短調ミサ曲のソプラノパートを見ると、コンスタンツェは非常に優秀な歌手だったことがわかります。彼女が数カ国語を自由に操っていたことは、モーツァルトとの書簡をお互いフランス語で書いたりしていたことからも窺えますし、それらはとても機知に富む、愛情あふれる手紙です。「悪妻」の代表とか言われますけれど、本当にそうだったのかどうか。とても素敵な人だったのではないでしょうか。

話を戻して。

その里帰りの時、ザルツブルクにはかつての同僚、作曲家のミヒャエル・ハイドンがいました。ヨーゼフ・ハイドンの弟です。大司教(この方に楯突いてモーツァルトはザルツブルグを去った)から、6曲のヴァイオリンとヴィオラのためのデュオを依頼されたものの、4曲まで書いたところで病に臥せっていました。しかし6曲と言われたら6曲書かねば許されぬ。

そこでモーツァルトは大急ぎでデュオを2曲書いてあげました。おかげでミヒャエルは無事6曲を「納品」することができ、九死に一生を得ました(そのくらい怖い大司教様だった)。ミヒャエルはこの恩を忘れず、終生モーツァルトの直筆符を手元に置いていたそうです。

そういうわけで私は(たぶん私だけですが)この2曲の二重奏曲を『ハイドンデュオ』と呼んでいます。この年はモーツァルトにとって何かとハイドン兄弟と縁の多い年でした。結果として6+2=8曲の傑作が生まれたわけです。

カルテットとは全く違った味わい。ヴァイオリンがメインでヴィオラが伴奏という「ありがちな」ことでもない。二つの楽器の対話が小気味よく進んでいきます。さっと爽やかな気分になれる曲です。
ヴァイオリンとヴィオラのための曲は意外にも非常に少なく、演奏会も稀です。結果としてこの『知られざる傑作』は滅多に演奏されることがなく、とても残念なことだと思っていましたので、今回の演奏会で取り上げることができて嬉しく思います。

同時期の作品は、上記6曲の『ハイドンカルテット』と『ハ短調ミサ曲』。また、ザルツブルクからウィーンに帰る途中にリンツで4日間で書きあげたとされている『リンツ交響曲(第36番)』が有名です。

EAV第1回公演で演奏したシンフォニア・コンチェルタンテも、ヴァイオリンとヴィオラがソロという珍しい曲です。モーツァルトのザルツブルク時代の最後を飾る作品でもあります。その頃のザルツブルクには、ヴァイオリンとヴィオラの二重奏という流行があったのでしょうか。そこまではまだ私は調べがついていないのですが、ご存じの方はご一報頂けましたら嬉しいです。

それでは皆様お元気で。モーツァルトを聴いて免疫力を上げましょう。本当に上がるらしいですよ。

佐藤俊太郎


アンサンブル・アール・ヴィヴァン 第3回公演


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