映画『アマデウス』といえば、ショッキングなモーツァルト像を描いた大ヒット作ですが、元々は舞台作品でした。そこでモーツァルト役を演じたのが、サイモン・カーロウ。のちにこの戯曲が映画化されたとき、彼は映画デビューを果たします。『魔笛』をモーツァルトに委嘱した、シカネーダーの役で。
この映画は少年であった私に大きな影響を与えました。そして何故か、サイモン・カーロウの顔がとても心に残りました。今調べたら、『アマデウス』は84年の作品だそうです。私は中学生。
その後、彼には2度会いました。
1度目は2000年ザルツブルク。モーツァルト生誕の地で、映画の撮影をしていたのがサイモン・カーロウ。私は声をかけられなかったのですが、ホテルの人が、そう、あれはシカネーダーの役をやった人だよ、と言っていました。
『アマデウス』を見て、モーツァルトに惹かれて、音楽家になって、モーツァルトの街で、あの、サイモン・カーロウに会うなんて。
2回目はロンドン。今度は同じ舞台の上でした。
彼が司会で、グラモフォン・アウォードの授賞式。これはクラシック音楽の賞としては最も大きなものです。舞台上にはイギリス室内管弦楽団が陣取って演奏します。受賞者たちは入れ替わり立ち替わりに演奏するのですが、たまに時間があく時がある。そんな時に余興(?)として私が指揮しました。
「紳士淑女の皆様、ここでヘンデルの音楽を聴きましょう。至極当然ながら、今私たちには指揮者が必要であります。指揮者をお呼びしましょう、温かい拍手を、Shuntaro Sato!」
あの声で!