皆様からこのジャーナルへのご感想をいただくのですが、一番多いのがカルロス・クライバーに関するご感想です。というわけで今日はクライバーの話題、第3弾です。
クライバーの『ボエーム』というと大変有名でした。先日、村上春樹さんの『小澤征爾さんと音楽の話をする』という本を再読しておりましたところ、
「カルロス、君のボエームは本当にすごいよ。いや本当にすごかった。」
「おいおい、セイジ、ボエームはな、僕は眠ってたって振れるんだぜ。」
というようなエピソードが載っていました。そのくらい若い時から何度も指揮してきたし、研究してきたし、そして数少ないレパートリーの一つとして数え切れないほど演奏してきたし、そして演奏するたびに賞賛の嵐だったわけですね。
そんなクライバーがイタリアでボエームを指揮した時のこと。ある日のリハーサルが終わった後で、クライバーがロドルフォ役の歌手に声をかけました。
「君、このあと時間空いてるかな?もしよかったら僕がピアノを弾くからもうちょっと歌って欲しいんだけど」
「マ、マ、マエストロ、私の歌にご不満がおありということでしょうか!?」
「いや、今日はなんだかボエームを『楽しみたい気分』なんだよ。歌ってくれないかなあ。」
本当に音楽が好きな人だったのですね。
キャンセルのクライバーばかりが語られるので、その反対のお話をしてみました。
佐藤俊太郎
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カルロス・クライバーとの文通
2021年6月8日
クライバーのこと
2021年2月16日