理想の庭

『浄められた夜』のレッスンの時、

「私にはとてもあなたにこの詩を訳してあげられないわ、マイ・ディアー」

などと言って顔を赤らめるような純真な先生に音楽理論を習った。ロイヤルアカデミーの作曲の教授。メシアンの弟子だった。

ある日その先生の家に呼ばれた。ご主人とご飯を食べた。

ずいぶん長い長方形の庭。庭の先は並木になっていて向こうは見えないのだが、

「あの並木まで行ってきてごらん」

言われて行ってみると、なんとそこには小川が流れていた。

「あそこで鱒が釣れるのよ」

私にとっての理想の庭である。